【インタビュー】激戦化するこめ油市場の品質の高さと万能性を、アンバサダーによる幅広いレシピでアピール

2020年08月28日
 


〔業種〕食品メーカー
〔実施プロジェクト〕累計66名のアンバサダーによる、2年間のアンバサダープロジェクトを実施。レシピ投稿、イベント実施、グッズ提供などを行う。

〔サマリー〕
●こめ油市場が激戦となる中、質の高いレシピを通じて商品の魅力を効果的に伝えたいと考えました
●食への意識が高いアンバサダーに、「米油」の長期的なファンとして発信し続けて欲しいと思いました
●2年間で2000以上のレシピが集まり、当社の認知度が約16%アップしました
●タイアップページ
https://www.recipe-blog.jp/sp/r200805k2

創業72年を誇るボーソー油脂は、国内トップクラスのこめ油メーカーとして、国産原料にこだわった「米油」を製造・販売しています。同社は2018年よりレシピブログのアンバサダープランを活用し、「ボーソー米油部(こめあぶLOVE)」を結成。60名以上のレシピブロガーと2期2年間にわたってレシピ開発やイベントの実施、メールマガジン発行などを行いました。プロジェクトを牽引した品質保証部長の高橋美奈子氏に、レシピブログやフーディストの魅力、利用後の変化について伺いました。

ボーソー油脂株式会社 高橋 美奈子氏


ボーソー油脂株式会社 品質保証部長 高橋 美奈子氏

94年に入社後、研究開発部門、営業部門を経て2014年より営業本部にて課長職に。18年より販売促進室長に就任し、和洋女子大との産学連携イベントや新しいこめ油レシピの提案などに邁進する。20年3月より現職


5年で市場規模が約10倍に プレイヤーが増え競争が激化

――そもそもこめ油という市場はどのようなマーケットなのでしょうか?

家庭用こめ油市場は2015年頃からテレビの情報番組で「身体にいい油」として取り上げられ、ここ数年で爆発的に伸びてきました。その後も一過性のブームとして終わることなく、美味しくて健康的、クセがなくもたれにくい、カラッと揚がるなどの魅力が生活者に受け入れられ、市場に浸透しています。2014年度は約8億円だった食用こめ油市場も、2019年度に約78億円と、この5年で10倍近くに拡大しています。

スーパーマーケットや生協、ドラッグストアなどお取引各社のバイヤーのみなさんからも、注目カテゴリとして評価していただいています。

――こうした状況でマーケティング活動にどのような課題を感じていらっしゃいましたか?

テレビ放映の機会が増えるに従い認知度は上がり、マーケティング活動はしやすくなっていきました。その一方で、東南アジアやヨーロッパから安価なこめ油が多数輸入されたり、大手製油メーカーの参入が相次いだりと急激にプレイヤーが増え、2016年頃から激しい価格競争にさらされるようになりました。

もともと国内のこめ油市場は主要こめ油メーカー5社で製造・販売してきました。中でも当社は、国内の精米所から集めた国産の米ぬかを用い、原材料や品質にこだわっているメーカーです。競争が激化する中で、当社製品の質の高さや魅力を効果的に伝え、ブランディングする方法を模索していました。

それに加えて、こめ油の新しいポジショニングを確立したいとも考えていました。これまでこめ油というと、加熱せずそのままサラダにかけたり、バターの代替品としてスイーツづくりにご利用いただいたりするケースが一般的でした。けれどその他の油と同様に肉・野菜料理やパスタなどどのような料理にもお使いいただけます。こめ油の万能性を伝えることで、新たな「家庭の定番」にしたいと思っていました。

料理インフルエンサーによる質の高いレシピの数々
――その中で、なぜレシピブログを利用しようとお考えになったのですか。

マスメディアへの広告掲出やSNS広告など様々な手法を検討しましたが、実際に製品を利用していただき良さを実感していただくことで、口コミを通じて「米油」の良さを伝えたいと考えました。

中でもレシピブログのフーディスト(料理インフルエンサー)は、食に対する意識が高く、毎日生活の中で料理をしている方々です。プロジェクト実施前に行った認知度調査では、こめ油カテゴリを知っている人の割合は9割近く、使用経験のある方も45%に及びました。一般的な調査ではこれほどの数値はなかなか出てきません。情報感度の高いフーディストのみなさんにアンバサダーに就任していただき、「米油」のファンになっていただけば、当社の製品の良さが自然に広がっていくだろうと考えました。

――プロジェクトの実施を検討する上で、レシピブログを見てどのようなご感想をお持ちになりましたか。

日常生活で起きた様々なエピソードを盛り込みながら、楽しそうに書いている点がすてきだと思いました。ご自身の言葉で率直な思いを綴っているブログばかりで、読んでいてつい引き込まれてしまいました。

料理をする時間を大切にし、料理への高い意識とこだわりをお持ちのみなさんなら、「米油」の良さをご理解いただけるはず。このプロジェクトによって投稿されるこめ油のレシピは、新規性も有用性も高く、当社にとって大切な財産になるだろうと感じました。

旬なテーマで投稿を促す 新しいアイデアや高い熱量で使用方法が広がる
――具体的にはどのようなプロジェクトを行いましたか。

「ボーソー米油部(こめあぶLOVE)」というアンバサダープロジェクトを立ち上げ、レシピ投稿や商品提供、イベントなどを行いました。「アンバサダー」には、レシピブログのフーディストを対象に、2期を通じて約480名応募いただき、1期2期ともに33名、2年間で累計66名に就任していただきました。

アンバサダーのみなさんには当社から商品をご提供し、「きのこ&旬野菜のレシピ」「粉もん」など月ごとのテーマに沿った「米油」レシピを投稿していただきました。ブログにはみなさんが実際につくった料理のレシピや「米油」の使用感、味などについて自由に書いてもらっています。

プロジェクト開始時にはキックオフイベントを行い、エプロンやランチョンマットなどのオリジナルグッズをお渡しし、レシピ制作のモチベーションを上げてもらう工夫を行いました。

それに加えて、レシピブログ内に「ボーソー米油部(こめあぶLOVE)」の特設ページを開設。アンバサダーの方々が投稿したレシピの一覧や、「米油」の特徴を掲載しています。年間3500万UUを数えるレシピブログのトップページにも導線バナーを設置したことで、注目度も高く、多くの方に見ていただくことができました。

さらに、毎月配信しているアンバサダー向けのメールマガジンで「今月のテーマ」や季節ごとのメッセージを発信。新しいレシピのアイデアを考えるためのサポートも行いました。例えば「粉もの」がテーマのときには、クッキーやパウンドケーキといったスイーツにも使えることなど、具体的な使用例を示すようにしました。自分自身も一生活者ですし、アンバサダーのみなさんに寄り添う親しみやすいメッセージを伝えることを心がけました。

年に2回の料理イベントも行いました。外苑前アイランドスタジオで「米油」を使ったお弁当を召し上がっていただいたり、みなさんのレシピを栄養の観点から専門家にコメントしていただいたり、あるいは新商品のミニボトルのサンプリングやたこ焼きパーティーなども行いました。

――実際にアンバサダーと接してみて、熱量はいかがでしたか。

意識の高い生活者から直接様々な意見を聞けることは、マーケティング活動の参考にもなります。イベントでは「米油に変えてからお皿洗いが楽になった」などのリアルな声を聞けたばかりか、ホームパーティーやご自宅で開催している料理教室などで実際に「米油」を利用してくださった方がいることもわかりとても嬉しかったですね。中にはワードファイルに使用感やご友人の意見、料理写真などを独自のレポートとしてまとめてくださった方もいらっしゃいました。質の高い製品をつくり続けてきてよかったなと実感した瞬間でした。

こうした客観的なご意見は、自社商品の見られ方やポジショニングなどを知る良いきっかけとなり、マーケティング活動の新たな指針ができました。私自身も、アンバサダーレシピを参考にしてオイル煮や白菜大量消費レシピ、焼き菓子などをつくったこともあり、自分自身の「米油」料理のレパートリーが広がったように思います。

2年で2000レシピが集まりアンバサダーとの信頼構築、認知度16%アップに
――プロジェクトの実施後、どのような変化がありましたか。

プロジェクト開始から約2年間で、2000近くのレシピが集まり大切な財産ができたと感じています。狙い通りに認知度は上昇し、2期スタート時にはレシピブログ会員におけるこめ油カテゴリー全体の使用経験は約13%アップ、当社の認知度は約16%アップしていました。

                                   実施期間:2019年9月6日~2019年10月4日 n=459

2年にわたる長期間のプロジェクトに伴走するのは大変だと思う方もいるかも知れませんが、レシピブログを書いてくださる方々の強い思いやレシピの幅広さ、質の高さを日々間近で見ることができて、生活者の方々の暮らしや商品の利用シーン、自社のファンが生まれる瞬間などを見られる最適なプロジェクトだったと考えています。

――今後の展望は?

これまで集まったレシピを独自のレシピサイトにまとめたり、店頭などの販促物に活用したりするなど、引き続き「米油」の万能性を広くアピールしていきたいと考えています。素晴らしいアンバサダーのみなさんと出会えて、本当に良かったと感じています。

 

取材・文/石川香苗子  撮影/筒井聖子